『成功したいなら「失敗力」を育てなさい』を読んで

『成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(中曽根陽子著・晶文社・1500円)を読みました。

中学受験のみならず、教育の最先端を知るのに最適の一冊です。

中でも特に参考になった部分をいくつか挙げておきます。

 

■P22 「インバウンドグローバル」について

「インバウンドグローバル」とは何かというと、自分自身が日本から一歩も出なくても、グローバル化の影響を受けないわけにはいかなくなるということです。

私自身、国語の教師なのにもかかわらず、出講先の小学校やオフィスなどで外国の人とのコミュニケーションの場面が確実に増えています。

現在出講している私立小学校は英語のイマージョン教育をしているため、教員の多くは外国人。私が起業して入ったオフィスの仲間はスウェーデン人。英語が話せないことはまちがいなくデメリットです。私のような国語の教師ですらインバウンドグローバルにさらされているのですからこれからの子ども達が大人になるころはもっと英語でのコミュニケーションを迫られるはずです。

本書は予測できる未来を今の保護者の方々に「私事」として伝えてくれていると思います。

 

■P43 子どもの幸福度2回連続世界一のオランダの教育

「友達にいじめられないよう、できるだけ自分を出さないように振る舞うことが多い日本の子ども達には、いったいどんな力が育つのでしょう」

「そろそろ真剣に、日本の教育のあり方について、私たち自身が考え直す時がきているのではないでしょうか」

に非常に共感いたしました。

オランダ、デンマークで行われているようなお互いの意見の違いを尊重する「ピースフルスクールの日本版プログラム」が広まると、日本におけるいじめも少し変わってくるかもしれません。昔からの悪い文化を少しでも修正できるとしたらそれは「教育」しかないと思います。「自分の幸せは自分で創る」という意識がオランダの子どもたちの中に育っているというのはすばらしいことだと思います。日本とだいぶ違いますよね。

 

■P68「どこを見る?中学校選び“7つのポイント”」

1 校風を見る めんどうみの良さか、自主性尊重か

2 カリキュラムを見極める 受験科目重視型か、リベラルアーツ型か

3 探究型の学習に取り組んでいるか

4 体系的なキャリア教育を行っているか

5 課外活動(部活や行事、体験学習)を重視しているか

6 グローバル化に対応しているか

7 特徴ある教育を行っているか

これらは、多くの学校を見てこられた中曽根さんの経験が凝縮された視点でとても参考になります。とかく「合格率80%偏差値」「大学合格実績者数」「立地」だけで学校を選びがちですが、7つのポイントを意識して学校を見るようにすると学校の本当の価値が見えてくると思います。

 

■P116「自己肯定感が低い日本の子ども達」

「自己肯定感が低い日本の子ども達」が内閣府、厚生労働省のデータをもとに語られています。

「日本は諸外国に比べて、自己を肯定的に捉えている者の割合が低い」

「自分の『将来への希望』を持っている者は諸外国の8~9割に比べて約6割と少なく、『うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識が低』い」

「『幸せ感』のある者も減っている」

とのこと。

どれも実際に自分自身、自分の周りで実感していることばかりです。学校でも会社でも組織が優先され、個人は後回しという昔からの文化はいまだ根強いです。

組織を優先して個人も幸せになれる時代は終わったはずで、みんなうすうす気が付いているはずなのに、それを教えてくれる人は学校にも会社にもいません。学校、会社、国家は教えないですよね。管理しづらくなるのですから。

自分から情報を取りにいかないといけませんね。

 

■巻末 開成中学高等学校 柳沢校長先生との対談

日本とアメリカの文化の違い、昔と今の時代の違いというものを子どもたちにはっきり認識させた上で、子どもたちにどうしたらいいのかを考えさせる柳沢校長先生のお考えを知れば知るほど、

「うちの子もやはり開成に通わせたい」

と思われる親御さんが増えるのでは。ここにも本編同様グローバル、レジリエンスが語られています。

 

■まとめ

『「レジリエンス」の鍛え方』(久世浩司著)がベストセラーになったように、これからは失敗しないことよりもいかに失敗から学ぶか、失敗から立ち直るかが求められる時代なのではないでしょうか。このレジリエンスをいち早く教育界で説いているのが本書です。

教育の今とこれからがこれ一冊でほとんどわかってしまいます。教育に関心のある方、業界の方には特におススメです。