「日本人は自分の意見が言えない。ディベートも苦手ですね」
「あなたの意見は、と聞かれるとみんなきょろきょろして、自分ではないだれかに答えてもらおうとします」
あるセミナーでパネリストを務められたフランス人女性の言葉です。
この女性は名門ソルボンヌ大学卒で、日本の大学でも教鞭をとられていた方です。
こうした問題を解決すべく日本の小学校でもディベート授業を取り入れているところが増えています。
ある大手中学受験塾でも生徒にディベートをさせ、自分の意見を書かせることを中心にした授業を展開しています。
もちろん、それはそれで大事なことです。小学生時代にディベートする経験は必要でしょう。
くだんの大手塾のディベート授業を見たことがあります。
たしかに最初の方は意見を言う子もいますが、なぜそういう考えになるのかの理由がなかったり、時間が経つにつれ単なるおしゃべりになってしまっていたり、ということが多い。
なぜこういうことになってしまうかというと、子どもたちにはまだ知識、経験が圧倒的に不足しているからです。
ディベートのテーマとして「地球温暖化問題」がありますが、子どもたちはすぐに「二酸化炭素が減るように植林を増やせばいいと思います」とか「みんなが自動車に乗らないようにすべきだと思います」などと言います。たしかにその通りなのですが、それが現実になぜできないのかの理由までは語れません。
これらについて語るには相当な知識が要求されます。
それに対して「いじめ問題」は子どもたちにとって非常に身近で深刻な問題なだけにさまざまなケースや意見が出ます。生々しい、いじめの実情については、子ども方が大人よりもくわしい。
こうしたテーマだと、彼らのディベートもかなり実のあるものになります。
ただし、自分の意見をいったりディベートしたりするには、その件についての確固たる知識が必要です。
また、小学生たちの授業時間には限りがあります。自分の意見やディベートに時間を割いた分、教科の知識修得に割ける時間も減ることも忘れてはいけません。
先のフランス人パネリストの女性はこうも言っていました。
「日本人は先進国の中で最も自国のことをよく知らない民族」
「歌舞伎や相撲について興味がなくても、日本人なら外国人に簡単に語れるくらいにはなっていてほしい。外国人はみな日本のすばらしい文化について知りたがっているのですから」
自分の意見やディベート力ももちろん大事ですが、まずは自国の歴史や文化、そして、それを語るための知識を身に付けることの方が優先ではないでしょうか。特に小学生時代は。
人間、アウトプットばかりしているとしていると中身が枯渇してきます。
インプットが十分にあるときに良質のアウトプットも出てきます。
「ディベート授業を(とにかく)やっている」ことが大事なのではなく、
「ディベートができるだけの知識の修得」に努めているかが大事なのではないでしょうか。
ディベートは小学生には早いと思いますが、いかがでしょう。
お子さまの塾選びの際にぜひ気を付けていただきたいと思います。